『オトメクライシス』のここがクライシス

長らく続いていた仕事がようやく落ち着きましたので、年度末に買った『オトメクライシス』をサクッとプレイしました。
そしてあまりにサクッとコンプリートできて愕然としました(´Д`;


いまどき5時間でコンプリートできてしまうっていうのは、MU-6さんにしては珍しく音声を飛ばし飛ばしプレイしたとはいえ、かなり短いですよ?
日々仕事に勤しんであまりエロゲをプレイできないサラリーマンに優しい仕様なのは大変嬉しいのですが、出来が出来なので単なる手抜きと取られかねないのがとても残念です。
と見え見えの皮肉は置いておいて、最初から予想できたことではあるのですが、とてもとても残念な出来でした(^^;


何が残念ってシャレ抜きで構成要素のほぼ全てが失敗していることですよ。
ああ、ここで言う失敗っていうのは当然ながら「百合ものは商業的に成功しない」とかそういう意味ではないですよ。『オトメクライシス』が商業的にどういう成績だったのかなんて知りませんし。それ以上に致命的なのはこのソフトはファンディスク的存在のはずなのに、どのファンにも訴求できていないんですよね…。
では、怒りをブチまけたいので何がどうダメだったのか見て行きましょう。題して「オトメクライシスのここがクライシス」!


さて、『オトメクライシス』のアレな点は主に以下の3点に集約できます。

  • そもそも企画が今までの作品を踏みにじりすぎ
  • ゲームシステムの改悪
  • 『XrossScramble』と比較した場合の相対的な物足りなさ


これを踏まえてここから先の文章ではそれぞれの項目について簡単に振り返ってみることにしますかね。

◆そもそも企画が今までの作品を踏みにじりすぎ
これはもう改めて解説する必要もないと思うのですが、本作は様々な次元を移動しながら自分の気に入った女の子に性的いたずらをしたあげく、人形に変えてしまう魔女・ローリエと、彼女を追う捜査官・緋色の戦いを軸としたストーリーです。


これ、真面目に不思議なんですけど、このゲームの企画を立てた人は元のゲームのヒロインが好きな人たちが、「その娘がわけのわからん魔女に嬲られる」なんて話を気に入ると思ったんですかね?
もしそう思ったんだったら本当に脳をゆすいだ方がいいよ(ぉ


ご丁寧にローリエに捕まってた女の子たちは全員彼女にいたずらされた後だっていう描写まであるしなぁ……(´Д`; オレが処女厨だったら、ディスク割ってますよ?
緋色のキャラ設定も「戦闘などで興奮すると女性限定で効力を発揮するフェロモンが分泌される」という非常に斬新なもの(皮肉)で、中盤までは戦闘→フェロモン→なしくずしでHシーンという実にわかりやすい展開が繰り返されます。なんだこれは、繰り返しコントか。
玲愛と翠のHシーンはそんな設定を用意してまで見せたいものだったのかと一晩かけて話し合いたい気持ちでいっぱいになりましたですよ、トホホ……。

◆ゲームシステムの改悪
次に見ていくのは「キャラクターには思い入れはない」という人の観点です。
『オトメクライシス』は基本的に戯画が『デュエルセイヴァー』で確立したシステムを流用したアクションゲームです。そこでこの項目では「未亜やリリィはどうでもいいが、オレはあのアクション部分が好きだ」という硬派なゲーマーの方の視点で見てみましょう。あるいはなんとなくエロゲでアクションをやりたくなった、という方でもかまいません。


さて、プレイした人にはわかるでしょうが、『デュエルセイヴァー』システムの最大の特徴にして魅力は簡単なアクションで、大勢の雑魚キャラをなぎ倒し吹き飛ばす爽快感にこそあります。
コンシューマで例えるならば無双シリーズのそれが最も近いでしょうか。
ところが今回のゲームは「タイマンアクション」と銘打って、システムはそのままになぜかタイマンオンリーに切り替わっています。
おそらく何も新しい要素がないのはユーザーに悪いと考えてのことだと思う(というか思いたい)のですが、良かれと思ってやったことが明らかにマイナスに働いています。


なぜか? 1対多数がウリのシステムを、操作性もシステムもフィールドもそのままに1対1に移植して面白さが変わらないと思いますか? 爽快感は大勢を一度に吹き飛ばすから味わえるものであって、1対1にするとその良さは損なわれ、ただ大味さだけが残ってしまいます(´Д`;
『三国無双』や『戦国BASARA』が一騎打ちだけになったら、絶対面白さは下がりますよね?
「大味さだけが残る」はさすがに言い過ぎかもしれませんが、わざわざシステム改変した意味が見出せないのは事実です。

◆『XrossScramble』と比較した場合の相対的な物足りなさ
さて、戯画で『デュエル〜』のシステムを利用したファンディスクというと既に『XrossScramble』があるわけですが、いわば二番煎じの本作はこれと比較しても物足りなさを感じさせます。
二番煎じが最初よりさらに悪くなってどうするよ…(´Д`;
天ぷら名人だって二代目は初代と同じ腕前じゃ、初代の名声は超えられないって『美味しんぼ』で言ってたぜ?(ぉぃ


これには2つの要因がありますが、1つは非常にわかりやすく単純に話が短いから。
あえて補足するなら終盤手前まで同じことの繰り返しと、シナリオが単調なのも物足りなさに拍車をかけているかもしれません。
んで、もう1つは先述のシステム改変とも絡みますけどフリー戦闘などのやりこみ要素が減ったから。
『XrossScramble』ではフリー戦闘が用意されていて、それである程度成果を上げないと見られないCGとかがあったんですが、今回その辺がばっさりなくなっています。
まあ、あのフリー戦闘はフリー戦闘で単なる作業じゃないかっていう意見もあるかと思うんで、必ずしも改悪じゃないとは思うんですが……、せめてボリュームの水増しくらいはしても良かったかもです(ぉ


って、『デュエル〜』のフリー戦闘は面が進むにつれて敵の数が増える&敵の体力が増えるの両面で難易度を上げる作りになってるんで、タイマンを採用した時点でフリー戦闘の追加は難しくなっちゃうんですけど。
体力ばっかりアホみたいに強化するわけにもいかないし、新規設計は面倒だもんね!(暴言)


以上、ムダに真剣に『オトメクライシス』のダメなところを分析してしまいました。
実は「手を抜きすぎなんだよ、ファンなめやがって」という一文で表現できるというのはナイショです(笑)。


一応少しだけフォローすると、終盤に入ってからの話の落とし方というかまとめ方なんかは決して悪くないです。
緋色の熱血ヒーローぶりは心地いいですし、ローリエにも子供っぽい論理とはいえ、彼女は彼女なりの経緯があってこういうことをやっているという説明はありますし。
孤独から反発に走ったローリエをどう更生させればいいのか、という緋色の問いに対して、ローリエと同じように世間に反発していた凛奈@この青に「あんたはそのままのバカでいればいいと思う。少なくともあたしを救ってくれたのは、そういうバカだったよ」と言わせるシーンなんかは素直に上手いと思いました(セリフはうろ覚えだけど)。
なのでライターさんがボンクラだとは決して思えないんですけど……やっぱ企画がクソすぎたのかな?
いろんな意味で企画とライターの作業分解点というか、責任分解点というか、そういったものを考えさせられる作品でした。
人は見た目が9割」じゃないけど、エロゲの何割かは企画だよな。多くの場合、企画=ライターだったりするからあんまり意識されないけど(^^;