数学を現実に応用せよ! 『ラスベガスをぶっつぶせ』☆☆☆☆★

というわけで少し前の話になりますが、『ラスベガスをぶっつぶせ』を見に行ってきました。
あらすじはこんな感じ。

MITの学生、ベンは悩んでいた。MITを優秀な成績で卒業するメドが立った彼が次に目指したのはハーバード大学医学部への進学。だが、それには尋常ではない額の金銭が必要なのだ。学費と生活費を合わせて卒業までに必要と思われる金額はおよそ30万ドル。
ごく普通の家庭に生まれたベンに用意できるような金額ではない。
彼は奨学金に狙いを付けるが条件を聞く限り、その奨学金をもらえる望みも薄そうだった。学校が求めるのは単に学力が優秀な学生ではない。「他の人が経験していないような経験」をしていること、それをレポートで発表すること……その条件はひたすら勉学に打ち込んでいたベンには最も縁遠い物のひとつだった。


そんなある日、彼の数学的な能力に目を付けたミッキー教授がベンにひとつの「ビジネス」を持ちかける。
やることは簡単。ラスベガスに行き、カジノのブラックジャックで荒稼ぎをする、ただそれだけ。
教授によればベンの数学的能力があれば30万ドルを稼ぐことすらたやすいという。
最初は気乗りしなかったベンも、やがて学費を稼ぐためと割り切りチームメンバーに加わることになる。
はたして教授の言ったとおり、チームは連戦連勝。またたくまに積み上がっていく大金、そしてメンバーのひとりでMIT一番の美女であるジルとも少しずつ仲良くなりベンの人生は順風満帆。何も恐れる物はないように見えたのだが……。

サンデーで連載している『ギャンブルッ!!』を読んでいる方ならおわかりかと思いますが、ここでいう必勝法というのは「カードカウンティング」という手法です。どのようなカードが出たかをある程度記憶しておけば、あとはブラックジャックの基本戦略と確率論の組み合わせで期待値を上げることができる、要約するとそんな感じのテクですね。
で、この映画なんですけどかなりオススメです!
個人的には2008年トップ3に入る面白さでしたので、まだやっている映画館が近所にある人はぜひ見に行くといいですよ。あるいは劇場ならではの迫力が必要な映画でもないのでDVD待ちでもいいですけど、カジノを手玉に取る主人公たちの勝ちっぷりの爽快感が楽しめる序盤〜中盤、カードカウンティングに気がついたベテラン監視員との攻防を描いた中盤〜終盤、状況が二転三転するクライマックスと最後まで飽きさせません。
見る前は「面白そうだけど地味そう」なんて思ってたんですが、完全に杞憂でしたわ。


ちなみに作中でも描かれていますけど、今のラスベガスではカジノ荒らしはほとんどできないようなので偶然これを見たあなたが数学の天才でも荒稼ぎは難しいようです(^^;
主人公たちもバカではないのでカジノに行くたびに色々と変装していくんですが、21世紀の現在ではほとんどのカジノに生体認証システムが導入されていて、ちょっとやそっとの変装してもムダなんだとか。すげーな、カジノ。
そういうのをわかった上で見ると、終盤の監視員との戦いもまた「お互い後がないもの同士のプライドを賭けた戦い」という見え方になっていとをかしだったりしますので補足しときます。
扱っているネタとは裏腹に奇を衒わない王道の面白さがある作品。アクションもラブシーンも(ほとんど)ないけどたまにはこんなのもいいものです。


余談ながら作中でミッキー教授がベンの数学的才能を見出した問題をちょっと載せておきます。
相当有名な問題なので答えを知ってる人も多いかも(^^;
でもこれをちゃんと論理的に即答できるなら結構数学力高いかもしれません。……ちなみに自分はそれなりに時間かかりました(´Д`;

テレビ番組に出ていると想像してください。今、あなたの前にはA,B,Cの3つの扉が置かれています。司会者によるとそのうちの1つの向こうには新車が置かれており、残りの2つにはヤギがいるということです。
司会者に「どれか1つ扉を選んでください」と言われたあなたは悩んだ末にAの扉を選びました。
すると司会者が「本当にその扉でいいんですか? 向こうにいるのはヤギかもしれませんよ? ……そこで今からヒントを差し上げます。あなたが選ばなかった扉のうち1つを私が開けてみましょう。その上であなたにもう一度扉を選ぶチャンスを差し上げます」と言って、Cの扉を開きました。
その扉の向こうにはヤギの姿が。
それを確認したところで司会者がもう一度あなたに問いかけます。
「どうします? 変えますか、変えませんか?」
さて、変更する場合としない場合、どちらが戦略的に正しいだろうか? ただし司会は正解を事前に知っていて常にヤギがいる扉を開けるものとします。

気になる答えですが変えた方が良いが正解になります。
詳しい解説はWikipediaの解説を見ていただくのが早いと思いますのでそちらをどぞ。
かなりわかりやすくまとまっていると思います。「数学的に正しい」と言われてもなかなか直感的にはうなづけませんが(^^;